2025年12月2日
情シスの生存戦略

属人化しすぎて辞められない地獄、もう終わりでいいよね?

属人化しすぎて辞められない地獄、もう終わりでいいよね?
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── AIと3つの防衛線で「辞めても回る情シス」に変える方法

12月の情シスは、なぜこれほどまでに孤独なのか

2025年12月。奈良の生駒山から吹き下ろす風が冷たさを増す季節ですが、あなたの執務室、あるいはサーバールームの熱気はどうでしょうか。

この時期の情シスの疲弊ぶりは、長年この業界に身を置く者として痛いほど理解しています。 Windows 10 22H2の更新プログラムがドライバと競合し、画面が映らないPCの復旧作業だけで貴重な休日が潰れる虚無感。 経営層からは「来期予算のために年内にゼロトラスト対応の道筋をつけろ」という、リソースも現状分析も無視した無茶振りが降ってくる。 そして、受話器を置いた瞬間に鳴り響く、予算消化狙いのベンダーからの営業電話。

思考が寸断され、目の前のタスクは積み上がり、帰宅しても頭の中ではアラート音が鳴り止まない。 「自分が倒れたら、この会社は止まる」 その過剰な責任感が、あなたをこの場所に縛り付けている鎖の正体ではないでしょうか。

しかし、あえて申し上げます。 その鎖を断ち切る時が来ました。あなたが「いつでも辞められる」状態を作ることこそが、皮肉にも、あなた自身と会社を救う唯一の道なのです。


「属人化」はあなたの罪ではなく、組織の怠慢である

なぜ、このような「地獄」が生まれるのでしょうか。 それは、あなたが優秀で、そして優しすぎるからです。

現場の困りごとを、マニュアルの不備やプロセスの欠陥として突き返すのではなく、自身のスキルと長時間労働で「なんとかしてあげてしまう」。 その結果、本来会社が整備すべき業務の定義(ドメイン)が曖昧なまま、あなたという個人の善意に依存する構造が出来上がります。

これは、建築で言えば、基礎工事の手抜きを現場監督が自分の手で柱を支えてごまかしているようなものです。 あなたが支えている間は建物は立ち続けますが、あなたが手を離せば崩壊する。 これを経営者は「君がいないと困る」と評価するかもしれませんが、構造的に見れば、これはBCP(事業継続計画)の重大な欠陥に過ぎません。

「属人化」とは、個人の抱え込みではありません。組織が仕組み作りを怠った結果、現場に生じた「歪み」です。 したがって、あなたが罪悪感を抱く必要は微塵もありません。


視点の転換:自分を「参謀」へと再定義する

この状況を脱するには、役割の定義を変える必要があります。 これまでのあなたは、すべてのリクエストを打ち返す「便利屋」でした。 これからは、環境を設計し、自分がいなくても回る仕組みを作る「参謀」へとシフトするのです。

逆説的ですが、「私が明日辞めても、会社は回る」という状態を作ることが、プロフェッショナルとしての最大の貢献です。 いつでも辞められるという事実は、あなたに精神的な防衛線(余裕)を与えます。その余裕があって初めて、冷静な判断や戦略的な提案が可能になるのです。


明日から「自由」を手にするための3つのアクション

では、具体的にどう動くべきか。 最新のAI技術と、泥臭い現場の知恵を組み合わせた3つの防衛線を構築しましょう。

1. 一次対応のAI化(「人間ルーター」の廃業)

「PCが重い」「印刷できない」といった問い合わせの9割は、再起動や基本的な確認で解決します。 これらをあなたが直接受ける必要はありません。 社内WikiやFAQを整備し、生成AIに読み込ませて、一次対応を自動化してください。 今は高度なチャットボットを構築しなくとも、ドキュメントさえあれば回答を生成できるツールは安価に手に入ります。

重要なのは、「ツールを入れること」ではなく、「まずAIに聞く」という新しい業務フローを定着させることです。 「まずは事実(データ)を集め、AIに判断させる」。この小さな成功体験の連鎖が、あなたの時間を守る防壁となります。

2. 無茶振りに対する「論理の防壁」

「年内にゼロトラスト」のような無茶振りには、感情ではなくデータとロジックで対抗します。 いきなり拒絶するのではなく、実現に必要な工程(現状調査、ポリシー策定、POC、展開)をロードマップとして可視化し、提示してください。

「山登り」と同じです。装備もルート確認もなしに冬山へアタックすれば遭難します。 「頂上(ゼロトラスト)を目指すには、これだけの準備期間と物資(予算・人員)が必要です。今の装備で登りますか?」と静かに問うのです。 これは逃げではなく、リスク管理という正当な職務遂行です。

3. 「辞めるための引き継ぎ書」を一晩で作る

これが最も強力な精神安定剤です。 現在の業務、パスワードの保管場所、緊急時の連絡先などを箇条書きにし、生成AIに「後任者への引き継ぎマニュアルとして整形せよ」と指示してください。 整った文章を一晩で作り上げることができます。

このドキュメントが手元にあるだけで、「いざとなればこれを叩きつけて辞められる」という心の自由が生まれます。 そして皮肉なことに、業務が可視化されることで、他者に任せられる切り出し可能なタスクが見えてくるはずです。


まとめ:構造の問題を、一緒にほどいていこう

あなたが今感じている苦しみは、個人の能力不足ではありません。 組織構造の歪みを、たった一人で背負わされていることから来る軋みです。

「自分がやらなければ」という呪縛を解き、「自分がいなくても回る仕組み」を設計する。 それこそが、情シスという仕事の本来の価値であり、あなた自身を守る盾となります。

まずは、今日鳴り止まない電話の件数を記録することから始めてみませんか。 事実は最大の武器です。そのデータが、あなたの現状を客観的に語り、組織を変える第一歩となります。


【次のステップとして、私ができること】

記事の中で「まずは記録すること」とお伝えしましたが、一人で抱え込む必要はありません。

あなたの現在の業務の中で、特に時間を奪っている「問い合わせ」や「定型作業」があれば、以下のリンクから私に送ってください。 営業は一切しません。それをAIで自動化するための「具体的なプロンプト案」や「手順」を、私からメールでフィードバックします。

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