2025年12月14日
情シスの生存戦略

資産管理の予算が降りない時の代替戦略。ウイルス対策ソフトの「管理コンソール」で法的証拠(ログ)を確保する方法

資産管理の予算が降りない時の代替戦略。ウイルス対策ソフトの「管理コンソール」で法的証拠(ログ)を確保する方法
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Excelでの台帳管理に限界を感じ、社長に「資産管理ツールの導入」を直談判したものの、「売上につながらない」「Excelで十分だろう」と却下された経験はないでしょうか。

経営者にとって、直接利益を生まない管理ツールへの投資は、単なる「コスト」として映りがちです。

しかし、現場を預かるあなたにとって、手動での台帳更新は苦行でしかありません。退職者のPCが行方不明になったり、知らぬ間にOSのサポート切れ端末が稼働していたりするリスクを、一人で背負わされているのが現状です。

ここで視点を変えてみましょう。

あなたの目的は「高額な専用ツール(ITAM)を入れること」ではなく、「正確な現状把握」と「監査やインシデントに耐えうる証拠(ログ)の確保」であるはずです。

もし、その目的が既存の予算枠内で、しかも「セキュリティ強化」という誰もが納得する名目で達成できるとしたらどうでしょうか。

今回は、専用ツールを買わずに、法人用ウイルス対策ソフトの機能を使い倒すことで資産管理を実現する、現実的な「抜け道」について解説します。

なぜ「ウイルス対策ソフト」が資産管理の代用になるのか

多くの情シス担当者が、ウイルス対策ソフトを単なる「検知ツール」としてしか見ていません。しかし、現代の法人向けエンドポイントセキュリティ製品は、実質的に簡易的なMDM(モバイルデバイス管理)機能を内包しています。

導入されたセキュリティソフトは、常に管理サーバー(クラウド上のコンソール)と通信を行っています。管理画面にログインすれば、以下のような情報が自動的に収集・一覧化されているはずです。

  • PC名(ホスト名)
  • 割り当てられたIPアドレス
  • OSのバージョンとビルド番号
  • 最終ログインユーザー
  • 最終通信日時

これは、手動で更新しなければならないExcel台帳とは異なり、電源が入るたびに更新される「生きた台帳」そのものです。

「セキュリティソフトを全台にインストールする」という行為は、実は「自動更新される資産管理エージェントを全台に配る」ことと同義なのです。

このアプローチの最大の利点は、新たな予算項目を作る必要がないことです。

「資産管理ツールを買ってください」と言えば却下されますが、「ウイルス対策ソフトの更新(または乗り換え)」であれば、それは企業の存続に関わる必須経費(ランニングコスト)として処理されます。

経営者の財布の紐が固くても、セキュリティという「盾」を名目にすることで、実質的な管理機能を獲得することが可能になるのです。

情シスを守るための「ソフト選定基準」

ただし、家電量販店で売っている個人向けのソフトを適当に入れても意味がありません。ひとり情シスが自身の業務負荷を下げ、身を守るために選ぶべき基準は明確です。

  1. クラウド管理コンソールが標準付帯しているか 社内に管理サーバーを立てる必要がなく、ブラウザ一つで全拠点の端末が見えることが必須です。テレワーク中の端末も可視化できなければ、資産管理とは言えません。
  2. 動作が軽いか 古いPCも現役で稼働している中小企業の現場では、ソフトを入れたことで動作が重くなり、「情シスのせいで仕事が遅くなった」とクレームが入ることは避けなければなりません。
  3. レポート機能の有無 社長や監査人から「現状はどうなっている」と聞かれた際、ワンクリックでCSVやPDFのレポートが出せるかどうかも重要です。ログの提出能力は、そのままあなたの「身の潔白」を証明する力になります。

タイプ別・推奨セキュリティソフト3選

自社の企業文化や「政治的状況」に合わせて、以下の3つから選定することをお勧めします。これらは単なる防御性能だけでなく、管理面での費用対効果が高いものです。

1. ESET(イーセット)|実務重視の玄人向け

動作の軽快さと検知率の高さで、現場のエンジニアや情シスから厚い支持を得ています。「ESET PROTECT」という管理コンソールが優秀で、ハードウェア情報の収集能力も高いため、古いPCの延命措置とセットでコスト削減を提案する場合に最適です。

推奨ポイント: 「重い」と言われないのが最大のメリット。迷ったらこれを選べば、現場からのクレームは起きません。
ESET公式サイトで法人プランを見る

2. ウイルスバスター(トレンドマイクロ)|保守的な経営層向け

日本国内での知名度とシェアは圧倒的です。機能の詳細よりも「みんなが使っている安心感」を重視する経営層に対しては、最強の説得材料になります。「迷ったらこれにしておけば文句は出ない」という、社内政治上の安全策として有効です。

推奨ポイント: 社長がITに疎いなら、迷わずこれ。「トレンドマイクロです」の一言で稟議が通ります。
ウイルスバスター製品ラインナップ

クリエイティブ職などでMacが混在している環境や、小規模なオフィスに適しています。世界的な実績があり、SOHOから中小規模向けのパッケージが充実しているため、柔軟なライセンス管理が求められる場合に強みを発揮します。

推奨ポイント: クリエイターが多い職場ならこちら。Macの管理機能も充実しており、世界標準の安心感があります。
定番のセキュリティソフト ノートン 360

「専用ツール」へのこだわりを捨てる

完璧なIT資産管理ツールを導入し、精緻なデータベースを構築することは、確かに理想的です。しかし、予算も人もいない状況で理想を追い求めても、現場は疲弊するだけです。

重要なのは、今そこにあるリスク(野良端末や更新漏れ)を可視化し、組織としての説明責任を果たせる状態を作ることです。

専用ツールの稟議を通すために不毛な社内調整で消耗するよりも、今すぐ購入可能な「ウイルス対策ソフト」という名の盾を全台に配備し、管理画面にログインしてください。

そこに表示されるリストこそが、誰の手も加わっていない、嘘をつかない「事実としての台帳」です。

まずは現在利用しているソフトの契約更新時期を確認し、次回の乗り換え候補として、管理機能に優れた製品を選定することから始めてみてはいかがでしょうか。

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